10月21日、NPO「つどい場さくらちゃん」(介護、認知症対策)を訪問し、理事長の丸尾多重子さん(まるちゃん)から、お話を伺いました。
阪神西宮駅そばにある一軒家「つどい場さくらちゃん」の玄関から、笑顔のまるちゃんが出迎えてくださいました。中に入ると、すでに2人の来訪者がいて、お話の最中でした。はじめに「さくらちゃん」に集う人たちの様子がよくわかるビデオを見せていただきました。99歳のお母さんを中心に、介護している娘さんも一緒に多くの方が「つどい場」に来て、しゃべり、泣き、笑い、食べ、学ぶ、一緒に外に出かけ、生きる、そんな場所が「さくらちゃん」ですというメッセージが込められていました。
まるちゃんは言います。
介護をしていると、言葉の暴力、手が出る、でも、認知症の人は逆らえない。介護者には情報が必要です。
ここを12年前に始めた時、いろんな人(行政、学生、医師、市議、介護者、介護される人)が集える場にしたかった。始めた時はなかなか理解してもらえず、「おかしな団体では?」という感じで受け止められていた。でも今は全国に広がっている。西宮では12カ所ぐらいで行われている。(川崎でも行っているところがあるそうです。今度訪問してみたい)経済的には大変だけれども、支えてくれる人たちのおかげで成り立っている。在宅看護をしている医師がかかわっていることも助かっている。
ご飯を食べながら「まじくり」多くの人が集う(実は丸尾さんは調理の免許を持っており、お惣菜屋を始めようとしていた時期もあり、お料理が得意、集い場にはいつもいいにおいが漂い、食事時にはいろんなおかずが並び、500円で、食べたいだけ食べられるようになっているそうです。すぐそばに役所があり、職員さんも来て食べていくそうです)その中から、自宅を開放して「つどい場」を造るとか、また、空き家を活用というように話が広がっていくといいと思っているそうです。
99歳のお母さんを看取った有岡ようこさんが、その様子をお話してくださいました。
ずっと2人で住んでいた。元気だったのに、ある日突然「洋子ちゃんはまだこないのかなー」と私に言った。(認知症の始まり)毎日同じことばかり問うてくる。母にたいする怒り、反省するが、次の日も同じことの繰り返し、自己嫌悪に陥る。認知症のことを知りたいと思った。デイサービスに週1回、週2回と増やしていった。母にとってデイサービスはいいと思っていたのにきつかったらしい。そんな時、まるちゃんに出会い、「つどい場」に誘われた。「つどいば」には毎日行くことができることにホッとした。思いに共感してもらえる。また、親子で旅行に行くこともできるようになったことに感謝している。ここにき来て3年、命と向き合うことの辛さもあったけれど、介護士さんやまるちゃんがいたことが大きな支えになっていた。99歳で亡くなる最後まで、みんなと一緒に看取ることができた。集い場があって本当に良かった。と話して下さいました。
「つどい場」には介護者以外にも行政や、ボランティア、学生、教員、近隣住民、医療・介護スタッフなど、年間で2,000人が訪れるそうです。専従スタッフは、まるちゃんだけですが、40人のボランティアが「つどい場」を支えています。
「つどい場」を始めようと思ったのは、丸尾さん自身が、がんの母親、認知症の父親、うつ病の兄を看取った経験からだそうです。丸尾さんは田舎で介護をしていたのですが、介護の情報がなかった。もっと情報があれば、あんなこともこんなこともできたのにと後悔することが多かった。「介護者は介護に明け暮れて、出かけられなくなり、だんだん社会から孤立せざるを得なくなる。本人にとっても辛いことです」だから、もっともっと「つどいの場」が増えることを望んでいます。